電線は油に強い?耐油性の仕組みと油による硬化・膨潤のリスクを解説

2026.04.06 お役立ち情報

工場や工作機械の現場など、電線を敷設する環境において「油」は避けて通れない要素です。機械油や切削油が電線に付着すると、時には電線の寿命を著しく縮める「厄介な液体」へと変わります。

今回は、電線に油がかかると内部で何が起きているのか、その仕組みとリスクについて技術担当が詳しく解説します。

塩ビ(PVC)と可塑剤の関係

電線の被覆材(シース)には、一般的に「ポリ塩化ビニル(塩ビ/PVC)」が使用されています。本来、主原料のポリ塩化ビニルは塩ビパイプのように硬い材料ですが、電線として使いやすく(曲げやすく)するために、「可塑剤(かそざい)」という液体を混ぜて柔らかく加工しています。

この可塑剤が、今回のテーマである「油」の影響を大きく左右するのです。

可塑剤は「麺を練る水」のようなもの

可塑剤にはフタル酸系やアジピン酸系など多くの種類がありますが、いずれも油のような透明な液体です。これと塩ビの粉末を練り合わせることで、柔軟性のある「軟質塩ビ」が生まれます。

例えるなら、小麦粉と水で練り上げて作る「うどん」や「ラーメン」のようなイメージです。水が加わることで生地にコシや柔軟性が生まれるのと同様に、塩ビも可塑剤によって電線らしいしなやかさを保っています。

油が電線に与える影響:硬化と膨潤

うどんを茹ですぎると麺がふやけるように、電線の被覆も油に長時間さらされると、その性質が変化してしまいます。塩ビ被覆材に油が付着すると、内部の可塑剤と付着した油の間で「液体の引っ張り合い」が発生するのです。

その結果、主に以下の2つの現象が起こります。

硬化と膨潤

現象 メカニズム 主な原因
硬化(こうか) 塩ビ内部の可塑剤が油に溶け出し、被覆がカチカチに固まってしまう状態。 多くの軟質塩ビと一般的な機械油の組み合わせで発生。
膨潤(ぼうじゅん) 油が塩ビ内部に侵入し、被覆がふやけて膨らんでしまう状態。 切削油などで使用される水溶性油を吸収した場合に発生。

油による劣化が引き起こす安全上のリスク

油による硬化や膨潤は、周囲温度が高いほど進行が早まります。被覆が劣化すると、電線本来の「内部を保護する機能」が失われ、以下のような重大事故につながる恐れがあります。

  1. クラック(割れ)の発生:硬化した被覆は柔軟性がないため、曲げや引張の力に耐えられず、表面に亀裂が入ります。
  2. 内部への油の侵入:表面の割れ目から油が浸入し、内部の絶縁体まで硬化・割れを引き起こします。
  3. 重大事故の発生:最終的に導体が露出することで、短絡(ショート)や感電、さらには火災といった最悪の事態を招きかねません。

電線の耐油性と選定のポイント

上記のような事故を防ぐため、安全規格では「耐油性試験」が規定されています。しかし、注意が必要なのは、「試験に合格している電線=あらゆる油に万能」ではないという点です。

可塑剤の種類と油の種類の相性によって、耐油性は大きく異なります。「実際に使用する特定の油」に対して本当に劣化しにくいかどうかは、個別に試験を行わないと判断できないケースも多く存在します。

まとめ:現場の油に適した電線選定を

電線の耐油性は、単に規格上の数値だけでなく、使用環境との相性を見極めることが重要です。

  • 塩ビ被覆は可塑剤によって柔軟性を保っている。
  • 油の種類により「硬化」や「膨潤」といった劣化が起こる。
  • 劣化した電線は、感電や火災の重大なリスクとなる。

油のかかる過酷な環境だからこそ、信頼できるデータに基づいた確かな電線選定が求められます。

日合通信電線は、国際規格や国家規格など数百件に及ぶ認証を取得しており、これまでに様々なお客様の現場環境に合わせた耐油試験を積み重ねてきました。

目的に合ったケーブル選定について、まずはお気軽にご相談ください。

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著者情報

著者

技術部 A

愛媛県生まれで奈良住まいの40代、趣味はランニングと食べることが大好きな技術部員です。
電線の絶縁体やシースなど構成材料の開発や選定、海外規格の認証など新製品開発に携わっています。
単なる電気を運ぶ電線ですが、常に進化しつづける機器の要求に応えていくことにやりがいを感じています。

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