電線(ケーブル)の引張試験とは?目的・重要性と試験の流れを詳しく解説
電線やケーブルは、私たちの生活を支える重要なインフラの一部ですが、一歩間違えれば感電や火災といった重大な事故を招くリスクも孕んでいます。そのため、出荷前には厳格な安全性評価が欠かせません。
安全性評価には「電気的」「力学的」「化学的」の3つの側面がありますが、この記事では力学的特性の代表格である「引張試験」について、その目的や具体的な流れを分かりやすく解説します。
引張試験とは?
引張試験は、電線の被覆材が日常的な使用や敷設作業における負荷や曲げに対して、十分な耐性を持っているかを評価する試験です。
具体的には、電線の被覆材(樹脂)を試験機で破断するまで引っ張り続け、「どれだけの力で破断したか(引張強さ)」と「破断するまでにどれだけ伸びたか(伸び率)」を測定します。
引張試験を行う主な目的
引張試験の最大の目的は、電線の被覆材が安全規格で定められた基準を満たしているかを確認することです。電線の被覆には、役割の異なる2つの部位があります。
- 「絶縁材」の保護
導体を直接覆い、感電や漏電を防ぐ役割です。引張に対する耐性が不足していると、屈曲時に絶縁材が割れて導体が露出し、火災などの原因になります。 - 「シース材(外装)」の保護
熱、水、油、紫外線などの外的影響から内部を守る役割です。シース材が割れてしまうと、内部の絶縁材が直接ダメージを受け、製品寿命を著しく縮めることになります。
このように、引張試験は電線が本来の寿命を全うし、安全に機能し続けることを保証するために不可欠なプロセスなのです。
引張試験の具体的な流れ
引張試験は、単に引っ張るだけでなく、各国の安全規格に基づいた厳密な手順で行われます。
- 安全規格の確認
電線が使用される国(日本、米国、欧州など)の規格を確認します。規格によって、試験温度、引張速度、合否基準が細かく定められています。 - 試験片(サンプル)の作成
被覆材から「ダンベル状」または「チューブ状」の試験片を採取します。これは樹脂自体の強度を純粋に測定するためです。 - 標線(マーク)の記入
伸び率を正確に測るため、試験片の中央に一定の間隔で基準線を引きます。 - 試験の実施
専用の試験機にサンプルをセットし、規定の速度で引っ張ります。
UL規格に基づいた引張試験の例
ここでは、北米で広く用いられる「UL規格」に則った試験の数値例を見てみましょう。
試験条件と合否基準(例)
| 項目 | 規定内容(例) |
|---|---|
| 試験片形状 | ダンベル試験片(幅3.0mm / 厚さ1.0mm / 長さ100mm) |
| 引張速度 | 500 mm/min |
| 合否基準(引張強さ) | 10.3 MPa 以上 |
| 合否基準(伸び率) | 100 % 以上 |

試験結果の判定プロセス
実際に測定されたデータから、以下のように最終的な合否を算出します。
- 引張強さの計算:測定された力(45.0 N) ÷ 試験片の断面積(3.0 mm²) = 15.0 MPa
- 伸び率の計算:(破断時の伸び 75mm – 元の距離 25mm) ÷ 元の距離 25mm × 100 = 200 %
【判定】 引張強さ:15.0 MPa(基準10.3以上:OK) 伸び率:200 %(基準100以上:OK) ⇒ 規格に適合しており「合格」となります。
まとめ
今回は「引張試験」について解説しましたが、電線の試験は他にも沢山あります。感電や火災発生のリスクがある電線の安全性を評価するために、第三者認証機関や我々メーカーは日々こういった試験を行っています。私たちのつくる電線について、皆さまにより知っていただくことができたなら幸いです。

