シースとは?材質・目的・種類やUL規格(MTW)との関係を解説
電線やケーブルの選定において、避けて通れないのが「シース」の選択です。シースの種類によって、そのケーブルがどのような環境で使用できるかが決まります。
この記事では、シースの基本的な役割から、使用環境に応じた性能、そして産業機械配線で重要なUL規格(MTW)との関係について分かりやすく解説します。
シースとは?
シース(Sheath)は、英語で「刀のさや」や「植物のさや」を意味し、電線の最も外側をピッタリと覆う部分を指します。日本語では「外装」、一般的には「被覆」とも呼ばれており、米国では「ジャケット(Jacket)」と呼称されることもありますが、すべて同じ箇所を指しています。
シースの目的
電線は、電気を流す「導体」と、感電や短絡(ショート)を防ぐための「絶縁体」で構成されています。これだけで電気を送る目的は達成できますが、実際の使用環境では絶縁体だけでは不十分なケースが多くあります。
シースの主な役割は、内部の絶縁電線を物理的・化学的な外的損傷から保護することにあります。例えば、掃除機の電源コードのように「繰り返し巻き取られる」「引きずられる」といった動作がある場合、シースがなければ絶縁体が摩耗し、感電や短絡の危険が生じます。周囲環境に適応させ、電線の安全性を担保するのがシースの重要な役割です。
シースに求められる性能と周囲環境
敷設される場所や環境に応じて、シースには様々な材質的性能が要求されます。主な性能と環境の例は以下の通りです。
- 物理的保護: 踏まれたり、電線が移動したり、ロボットの可動部で使用される際の摩耗や損傷を防ぐ。
- 耐候性: 屋外環境における紫外線、雨水、低温(耐寒性)などから保護する。
- 耐薬品性・耐油性: 工場などで油や薬品がかかる環境でも変質を防ぐ。
- 耐熱・難燃性: 熱源の近くや、火災のリスクがある場所での発火・延焼を防ぐ(耐スパッタ性、耐火性など)。
ポイント
これら複雑に重なり合った敷設環境に適応するためには、最適な材質のシースを選定する必要があります。
シースの選定と安全規格(UL/MTW規格)
電線は火災や感電事故に直結する重要部品であるため、世界各国で安全規格が法制化されています。特に厳しい環境下で使用される産業機械配線では、規格への適合が必須となります。
UL1063(MTW規格)とは
米国規格のUL1063は、産業機械用電線として開発された規格で、MTW(Machine Tool Wire)と呼ばれます。日本の一般的なVCTF電線などと比較して、より過酷な環境に耐えうる性能が規定されています。
規格による性能の違い(比較例)
| 項目 | ワイヤーハーネス | ケーブルアセンブリ |
|---|---|---|
| 構成・形状 | 複数の異なる電線を束ね、特定の装置内部の配線経路に沿った複雑な形状(分岐など)を持つことが多い。 | 1本または少数のケーブル(シールド付きの多心ケーブルなどが多い)で、構成は比較的単純。 |
| 主な用途 | 主に装置「内部」の固定配線。 | 主に装置「間」の接続、または機器との短距離接続。 |
| 設計の側面 | 特定の装置専用に設計された「配線一式」。 | 比較的、汎用性のある「接続ケーブル」。 |
ポイント
日本国内向けの電線では対応できない耐熱性や耐油性が求められる現場では、MTW規格のような上位規格に適合したシースを備える電線を選ぶ必要があります。
まとめ
シースの役割は、電気を運ぶ絶縁電線を周囲環境から守り、装置全体の安全性を維持することです。
- シースは外的損傷や化学的影響から電線を保護する。
- 使用環境(熱、油、可動など)に合わせて材質を選定する必要がある。
- 産業機械など厳しい環境では、UL規格(MTW)などの安全規格への適合が重要。
産業界の進化に伴い、電線が敷設される環境も日々変化しています。環境に合わないシースの選定は、重大な事故につながる恐れがあるため、正しい知識を持った選定が不可欠です。
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多種多様な電線・ケーブルを国内外の幅広いメーカーから調達し、これまでの豊富な製品開発の知見をもって、お客様のニーズに最適な配線ソリューションを小ロットからでもご提案可能です。
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